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natsuno07

詩のクロッキー帖

author: natsuno07
空飛ぶ色いろ

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風鈴


もう昼時だから混んでいるだろうな
灼熱の駐車場に車をとめて
道路脇のラーメン屋に入ると
窓際にはいっぱい漫画が並んでいて、
ああよかった、まだテーブル席があった
みんなでお冷をまわしたりする
それから、お冷のグラスの水滴を
おしぼりで拭いたりする

そんな感じの真夏

母を亡くした翌日の昼に
とても静かでどこにもありそうな昼時に
それはあまりにも
日常的で自分の人生そのもののような
哀しみなんだなと思ったりする

口数は少なめに
仕事先でとっている昼時と
親の死が自分の中でとても似ているような気がする
たとえ悲しいとしても
とりあえずやらなければならないもろもろのこと
文句を言っても仕方ないこと
後悔すること反省すること
ここであきらめてはいけないこと
などなどはあるとしても
まぁ、腹をこしらえておかないと
という優しさのようなもの
いたわりのようなもの
などなどを感じ

短い時間をたゆたっている
ゆらゆら

それから
チリリンっと風が吹いたような気がする

2018-8-10
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バラ色の

透明なビニールにみずみずしい雨粒
鮮やかな蛍光オレンジのライン
模様として白く浮かんでいるアルファベット

色褪せ、ぼろぼろになり
今や見る影もない
そうなるときは必ず訪れるとしても
今はとても新鮮に見える雨の中で
傘をさして
いろんなことを考えていた

中学になって初めて買ってもらった辞書は
つるつるしたバラ色の表紙
でぃくしょなり
発音がひらがなで書かれていた

それにしたって
あんなに大変な思いをして生んだ子だというのに
そんなに何回か辞書を買ってやったりして
育てた子だというのに
いったいこの人は誰だろう
という表情を浮かべたあとで
ああ、妹ですなんていう
(あいむのっとゆあしすたぁ)
適当なんだと思う
目の前にはサマーな感じの海があったり
目の前にはレモンな感じの夢があったり

色褪せ、ぼろぼろになり
もう今や見る影もない
とある廃屋の台所に
ママレモンが置かれていた
とある廃屋の引き出しには
型紙なしで簡単に作れる
コットンのサマードレスが残っていた
女の子らしくも子供らしくもしなくてよいから

しあわせに

模様として浮かんでいる
透明なビニールにみずみずしい雨粒
きれいなオレンジ色のラインを見ながら
(あいむゆあどうたぁ)
わたしは少し笑ってしまった


2018-6-26





ルーティン

月曜も水曜も早送りで
また桜ふぶきの道を駅まで歩いている
おもえば
一年前はもっとかなしんでいた気がする
十年前はもっともっとかなしんでいたかもしれない

今現在
マニュキュアには飽きたし
爪は健康第一
紙ヒコーキみたいに諦めを飛ばせば
スイっと飛んでいくとはいえ
必ず誰かが拾うわけじゃない
とよくわかっている

かすれたように感じられる夢に
しがみつきすぎてはいけないと知っているし
年毎に別人になれたような若さは
もう遠いこともわかっている

早春の朝
顔を洗って
コーヒーを入れて
天気予報を見て
指輪を決める

でもどれだけ早送りしたって
かなしまないわけじゃない
いろんなかなしみに
区別がつかないくらいたくさんのかなしみに
似たり寄ったりのかなしみに
抗っていないわけじゃない
たとえそれが
習慣に過ぎないように見えたって
まったく慣れるということはない

そしてそれが何曜日だろうと
なんとか立ち直ろうとする
きのうより、一年前よりずっと
立ち直ろうとおもっている


2018-3-29







花の色は

かすれかすれのくせに
なにか問題でも?という様子ででてきた
今後の3年後の10年後の
こんなことをいったい何年やるのよというような
試し刷りというようなものに
ほとほと嫌気がさしてしまった

試案はともかくイエローはともかくマゼンダがない
思案はたっぷりイエローはまあまぁでもマゼンダはない
といったようについ変換しやすいシアンだけが
妙に意味深く記憶に残りがちだけれど

ないのはマゼンダだ

よくも だ を重ねてくれたね
わかってるけど
今後も3年後も10年後も
生きていることができるのだとしたら
住所氏名年齢にまっすぐ向き合って
なんでこんなに線がはいるのかとか
どうして色が汚いのかとか
派手過ぎはしないかとか
いくらなんでも地味すぎだろうとか
きちんと考えておくべきだとおもう

とまたまた「しあん」ばかりが
頭に入ってきがちで
そもそも
なにが足りないのか忘れ
そして取り返しのつかないほど
時はたってしまう
すぐ12月になってしまうくらいに

ないのはマゼンダ

花っぽい色
夢的な色
バスの座席のところに
つい忘れてきてしまった折り畳み傘みたいな色
ながめせしまに
いいそびれた色
その春めいた色
たとえば
そのような色

2018-3-28








シア・シュガー

シア・シュガー
という名のマニュキュアの
白い指先で物語をなぞる
少し溶けて固まったお砂糖色の
甘い指先

クシャクシャにして
捨ててあったネガフィルムの窓から覗くと
真っ白な唇をした
あなたが屈託なく笑っている
夏に刻まれた逆向きの日付

空もよく晴れている
あなたの物語が
ゆがめられると
水のなかで
笑顔が気弱に泳ぐ

砂糖の味がする指先で物語をなぞる
ゆらゆらと浮かび上がる
正確な向きの日付
夏の快晴

平和な光のなかで
ゆっくり定着していく
あなたの物語を祈る
手を宙にかざして
息をふきかける







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